2023.07.10

WEB業界

WEBサイトリニューアルが失敗する理由

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Googleで「WEBサイトリニューアル 失敗」と検索すると数多くの「失敗する理由」を皆様それぞれの立場、視点から解説されていて、どれもなるほどと拝見させていただきました。

私自身、今でこそ自社の広報マーケティング部門を長く担当させて頂いておりますが、かつてはWEB2.0等と騒がれた時代、黎明期に近い時代から長くデザイナー、ディレクター、プランナーとして「クライアントワーク」を経験してきました。

振り返ると提案の時には、一緒に飲みに行くほど関係性の良かったお客様と、「数年後には競合他社様でリニューアルするから」と悲しいお別れも残念ながら経験しました。

今回自身の経験も踏まえて「サイトリニューアルが上手くいかなかった理由」から、コラムを読んで頂いているご担当者様にとって、HAPPYなリニューアルが実現するポイントを考えてみたいと思います。

目次

依頼時のタイミングで8割が不満?

興味深く拝見させて頂いたのが株式会社FMC様のプレスリリース(企業の Web サイト制作に関する実態調査)です。
なんと8割のご担当者様が依頼時のタイミングで、なんらかの不満を持っておられると。

  • 費用感が不透明
  • 設計が不十分
  • ヒアリングが不十分
  • 納期が不透明
  • 専門用語がわからない
  • どのように要望を依頼すればよいかわからない

私自身、冒頭でもご説明させていただきましたがクライアントワークの経験者でもあり、現在はこのコラムを読んで頂いているであろう、広報マーケのご担当者様と全く同じ立場。
過去にもリスティング広告の業者様選びや、ホワイトペーパー制作業者様、ライターの会社の業者様やリアル展示会のブース施行会社様、出版会社様など多数のご提案を受けてきましたので、自分ごとに置き換えると「確かに」と思えることばかりかもしれません。

もう少し、これらを深堀り、ここから先は私見も含まれますが皆様にとってお役に立つ情報になるよう、解説をしていきたいと思います

WEB制作費の相場感

私も過去、多数のお見積りを作成してきました。誓ってお伝えしたいのは、全てのお見積りにおいて「明瞭会計」を心掛けてきました。

そしてどこの会社様も、私の存じ上げている会社様全て「明瞭会計」をされています。
ただ、ここが市場ではわかりにくいのが、単価が各社バラバラだということだと思います。

ある会社ではデザイン費が〇万円、違う会社ではそれ以上、以下のようなことがよく起こります。
確かにこれでは検討する側からすると比較が難しいですよね。

なぜ各社で単価が異なるのか

一般的には東京が高く、地方都市になるほど安い。
また制作会社の規模が大きければ高く、フリーランスの方の方が平均的には安い傾向があります。

もちろんこれは一般論であって、それに当たらない会社様、フリーランスの方も多数いらっしゃることは先に明記します。

ですが何故この傾向があるのかは説明ができます。それはWEB制作は基本的には「仕入れ」があまり発生しません。
細かく言えばサーバや、ドメイン、画像などの素材購入費、取材が発生するなら交通費など全くないわけではありませんが、自社で対応可能(技術的、スケジュール的な意味)な制作であれば、粗利率の高いビジネスです。

制作会社、フリーランスの方にとって最大の支出は人件費と、家賃、光熱費。
つまり東京都心部の規模の大きな制作会社であれば、相応の家賃がかかり、従業員の方も多数いらっしゃることが想像に難しくないと思います。

なので東京の大きな会社になれば費用は高くなり、地方で規模の小さい会社が安い。
という一般論ができあがるわけです。

大量生産ができない

これは私自身、多くの経験があります。

「簡単なものでいいから」

皆様もこのセリフ使われたことないでしょうか?(笑)
しかし実際、簡単でいいと言われ、他社様で作ったものの色違いなどを出してOKを頂いた試は一度もありません。

全てオリジナルです。
つまり1人でいくつも同時進行で量産することが出来ないものなのです。

なので規模の大きな制作会社は、数多くの案件に対応できるように複数拠点を抱え、多くの従業員を抱えます。
こういった背景が全く異なるので、各社「デザイン費」「コーディング費」と同じタスクを行っているのに単価が全く違ってくるというわけです。

前提にある人気商売

これもこの業界「あるある」ですが、実は私も今から20年近く前に所属していた制作会社。
当時デザインチームのリーダーをさせて頂いていましたが、実は初期の契約形態は「アルバイト」でした。

社長からも「社員になってくれ…」と何度か言われていましたが、最初はお断りしてました(最後は社員になりました)。
理由は「独立したい、フリーランスになる」という思いがあったからです。

「手に職」と言われる仕事では、必ずしも社員になるという選択肢を選ばない方が今も少なくありません。

技術を持っている方はプログラマー、カメラマン、ライターなど「引っ張りだこ=人気者」なのでどうしても相場的に費用が高くなっていきます。
同じ「写真撮影」だとしても「誰に依頼するか」で全く費用が異なってきます。

プロなのになぜ技術力・提案力が足りなく感じるのか

各社でなぜ単価がバラバラなのかは、少しご理解いただけたかと思いますが次に「設計が不十分」。
これはつまり技術的な話ですよね。
なぜ「プロ」にお願いしたのに「満足できる」アウトプットが提案時にでてこないか(納品時でないので提案書段階)を解説します。

得意分野が違う

例えば私は元デザイナーです。なので、得意分野はいわゆる「見た目」。
あと広告代理店でもお仕事をさせて頂いていたので、いわゆるSEOやリスティングといった「マーケティング施策」も得意分野です。

過去に様々なエンジニア様や、パートナー様として競合他社様とお仕事させていただいたので、主に以下のような得意分野に分かれていくと思います。
どこもコンサルティングなどは行っていますので、今回「コンサルに強い会社」という分野は作っていません(今時、作るだけでご満足いただける時代でなく、各社様マーケティングの知識も豊富なので)。

  • 雑誌を担当できるレベルで撮影やライティングが得意
  • 受賞実績が豊富でアーティスティックなデザインが得意
  • 著名人の方に、仕事を依頼できるようなコネクション力
  • 業界・ジャンル特化型のサイト制作
  • オープンソースでなく、自社開発のパッケージを持っている
  • 基幹システムとの連携などバックヤードの開発力が得意

例えばアパレルメーカー様であれば季節ごとのカタログ写真など、見た目に徹底的にこだわる必要があると思いますが、これを自社パッケージの会社様に求めると、やはり物足りなさが出てしまうと思います。
これは逆もしかりです。

提案段階と、制作段階で担当者が異なる

ヒアリングで物足りなさを感じられる場合、先に触れた「得意・不得意」も関連していますが、そもそも提案段階と制作段階で担当される方が異なることも少なくありません。
元々私がデザイナーをやっていた時代は、1人複数役の時代。

私も直接お客様の元へ伺い、デザインの依頼を受け目の前で修正案を出したり…。等も珍しい時代ではありませんでした。
しかし今では分業体制が当たり前になり、提案時は営業担当のみといったケースも少なくはありません。

現実的には制作現場、WEB業界の経験が浅く、全く異業種の営業をされてきた方がヒアリングを行うケースもあるため、どうしても不安に感じられることがあると思います。
このような場合は素直に「技術の方と一度話しできる機会を作ってください」とお伝えするのがベターだと思います。

適正な制作期間は?

恐らくどこの会社様も、提案時にスケジュールはご提案されていると思います。そのうえで不安に感じられるということは、価格同様「適正な制作期間」が分からないということがあるからだと思います。

例えばPowerPointの図形を動かしてほしい…程度の依頼が「今すぐ」対応できないのは当然としても、予想以上に時間がかかるケース。これには複数の理由があります。

簡単そうに見えて複雑な作りだから

これは皆様のお仕事でもあることだと思います。
例えばスマホの不具合があった場合、容量不足などスグに解決することもあれば、裏側で故障が起きている…なんてこともありますよね。

WEBサイトも同じく、簡単そうに見えるけど複雑なものもある。ということは事実なのでご理解いただけますと幸いです…。

スケジュールが立て込んでいるから

こちらは価格の個所で触れましたが、大量生産が出来ないもので、加えて内容によっては「この人でないと技術的に対応できない」ことが生じます。
そのため「予約取ることが難しい人気店」同様に、「今は対応できないです」といったことが生じることが起きてしまいます。

横文字でのやり取りは避けた方が良いです

どうしても専門用語が多い世界。
それでも例えば「HTML」を日本語で分かりやすく伝えるのはなかなか困難ですが、マーケティング用語などは私自身、自戒もこめてなるべく横文字は使わないことにしています。

これは実体験ですが人材業界にいたとき、その会社の役員が「CTAを提案して欲しい」とオーダーされたので私もマーケ担当として「CTA」を提案しました。
しかしその方にとって、それは「CTA」ではありませんでした。

ちなみに「CTA」とは簡単に言えば、どのようにWEBサイト内のボタンをクリックさせるか。
で、例えばボタンの色を心理学的に「クリックしたくなるように調整」や、誘導するための文章構成。
クリックすればノベルティが貰える等の施策を総合的に考えることなのですが、その方にとっては単に「ホワイトペーパーをダウンロードさせたいので、ホワイトペーパーのタイトル案を作って欲しい」というかなり各論なものでした。

こういった「お互いに思っている意味」が異なる可能性もあるため、なるべく専門用語、横文字を避けたコミュニケーションを取る方が望ましいですし、もし会話の中で疑問があれば「それってどいういう意味ですか?」と聞いて頂いた方が安全です。

RFPを作りましょう

これもインターネット検索するとよく出てくる「RFP」。
日本語では「提案依頼書」となります。

これも難しい書式は不要ですし、そもそも業界内で統一規格化されたRFPのフォーマットなんてありません。
できればどこかの制作会社に言われるがままにRFPを作成するのは避けた方が良いと思います。なぜなら得意分野が異なるため、すでにその時点でその会社のバイアスがかかってしまうからです。

なので今回はバイアスがかからないように「RFPの作り方」は説明せず、最低限押さえたい5つのポイントにまとめてみます。

  • リニューアルしたい本当の目的
  • 予算感
  • 求めたい技術やノウハウを具体的に
  • 納品物のリスト
  • スケジュールと体制

簡単に1つづつ補足していきたいと思います。

リニューアルしたい本当の目的

実際にプランナーとしてご提案してきた経験者として、「受注を増やしたい」ではなくもう少し具体的というか、WEBサイト自体に何を求めるかを明示頂けると良いと思います。
例えばこの依頼だと、パッケージを持っておられる会社様だとMA(マーケティング・オートメーションというツール)を含めた提案や、受発注システムなどの開発などに寄っていく会社様も出てくると思います。

最終的には「受注」につなげたいが、WEBサイトはまずそのために認知をあげて、多くの方に閲覧され、潜在的な新規の見込み客を増やしたい。
そのためのコンテンツ案含めて提案して欲しい等と言って頂いた方が良いです。

SEO等と幅を狭める必要はありません。

予算感

これも経験多いのですが「伝えると提案の幅が変わるから…。」と予算を伏せるご依頼者様。
お気持ちは理解しますが、先に説明させて頂いた通り、そもそも各社で単価感が違います。なので正直ベースにお伝えした方が良いです。

私も担当者としてはすべての業者様に出せる費用感をお伝えし、それでご提案できそうであれば打合せといった流れが基本です。

求めたい技術やノウハウを具体的に

ここは具体的に例えば「物撮りが得意なカメラマンを用意できる」や、専門領域(例えば医療分野)でのSEO実績の有無。
今だとAIチャットボットを必ず入れて欲しいなどもあるかもしれません。
バックヤード側でいえば東京都のアクセシビリティガイドラインに対応できること。天災などが起きた際のBCP(事業継続計画)対応や、セキュリティの何を重視するか。

CMSなども「単にオープンソースでなく商用CMS」でなく何のために商用CMSなのか。実際商用でもリスクがゼロではないですし、オープンソースでもセキュリティレベルを上げることは可能です。あるいは商用であってもプラスアルファの機能が必要になるケースもあるので、明確にしておきましょう。

納品物のリスト

よくあるのはデザイン元データや要件定義書等。

要件定義書もシステム会社様だと必ず分厚いものを準備しますが、デザイン会社様だと全くイメージしているものが違ったりします。

「前の会社がこうだった」は業界の標準ではないため「これが欲しい」としっかり明記しましょう。
またそれも含めて予算内に収めて欲しい。オプションでも良いなど費用にも関連させた方がトラブル回避に繋がります。

スケジュールと体制

スケジュールも例えばタイトな場合、なにがなんでもこの日程でやって欲しい。あるいは第一フェーズ、第二フェーズに分けてよいので、ここまでにはどこまで対応して欲しいと伝えた方が安全です。

あとは体制。例えば窓口担当に必ず専任者を置いて欲しい。
先に触れた通り、提案時の営業担当者はフェードアウトされるケースも多いので、提案時から実際案件を担当するディレクターに入って欲しいなど、求めているものを明記するようにしましょう。

まとめ

WEBサイトリニューアルは大体半年レベルのプロジェクト。
作ってその後の定例ミーティングなども依頼するのであれば、かなり長いお付き合いです。なので決裁者の方も現場の方を交えて、相性なども加味して決めるようにすることが望ましいです。

私も過去に「本社が勝手に違う業者に決めようとしてるけど、困るのでなんとか手を貸してくれ」と依頼されたこともありますし、現場は他の会社様を望んでいたのに、大人の事情で私たちが選ばれてしまい、キックオフから大荒れ…なんてことも経験しています。

担当者の立場でも、大人の事情で本当はチームの総意にそぐわない企業様を選ばざるを得なくなり、その後混乱したなんてこともありました。

まずはフランクに様々なご相談を頂き、相性含めて見極めて頂くことが大事だと思います。弊社ネクストソリューションズにも一度相談したいと思って頂ければ是非下記メールアドレスよりご連絡をお待ちしております!

著者・編集者情報

藤江信之 (マーケティング室)

京都出身。

大学卒業後、税理士向け商社で営業マンを経験したのち、2000年代前半より広告代理店や、WEB制作会社等で主にクリエイターとして従事。
大手エネルギー会社や、大手小売店、某市地下鉄などのWEBサイトやプロジェクトに関わる傍ら、2010年頃まで、都内のWEBデザインスクールで非常勤の講師を務める。

その後クライアントワークから、自社の広報マーケティングにキャリアチェンジ。
上場IT企業のマーケティング部門立ち上げに中心メンバーとして関わり、ウェビナーや展示会の運営などを通じリード創出を行う。

人材サービス会社を経て、2023年6月ネクストソリューションズに入社。
“提案サイド”と“担当者サイド”両方を経験した知見を活かし、マーケティング室の立ち上げ中。

趣味は市民ランナー&高校野球観戦&古城跡散策のマニア。

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