2023.12.04

ITトレンド

あるある…誤解されがちなDX(デジタルトランスフォーメーション)

  • DX

このコラムを書いているのは2023年12月1日。

いよいよ2023年も終わりを迎えようとしていますが、IT業界で最も注目を集めたのは、流行語大賞にもノミネートされた「生成AI」「ChatGPT」で間違いないでしょう。

一方、少し話題に上がることが、一時期に比べると落ち着いた感がありますが「DX」。
しかし、相変わらずネット上にある「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が本来の意味でなく、ITベンダーの都合の良い営業トークに利用されているだけ...

このように感じることも多いので、今一度、本来の「DX」とはどんなものか?
を年の瀬におさらいしてみましょう。

目次

本来のDXとは

以前にも当コラムで触れてはいますが、あらためてご紹介します。

元は2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した概念で、日本の経済産業省は以下のように言葉の定義を行っています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

要点は「データとデジタル技術を活用」することがまず「言葉上(デジタルなので)」の前提で、本質はこちらでしょう。「業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立する」

2025年問題とも紐づけられており、これから日本は人口減少は避けられない問題とされています。その上で従来通りでは企業も勝ち残っていけない。
だからデジタル等を活用して、会社を変革して新時代を勝ち残っていこうという、かなり壮大なストーリーなのです。

誤解・曲解されたDX

ところがインターネットでDXと検索すると、本質的なことに触れておられるコラムや、ウェビナーやYouTube等の動画も多くありますが、一方で「単に自社のITサービスを導入することがDXの始まり」と言わんばかりに、間違えたDXが蔓延しているのも事実です。

当コラムを読んで頂いている方の中にももしかすると、下記のようなことを「DX」と呼んでおられる方もいるかもしれませんが、経済産業省の定義する、本質的な「DX」では実はありませんよ。ということをまずはご紹介します。

  • 生成AI関連のサービスを導入すること
  • リモートワーク用のITツールを導入すること
  • 「営業DX」「管理部門のDX」のように部門単位でのITツール導入
  • WEBサイトのリニューアルや、CMSなどのITツールを導入すること
  • 電子署名のツールを導入すること

「営業のDX」等はよくインターネット上に蔓延する言葉ですが、ほとんどの場合、どこかのITベンダーのサービスのセールストークになっています。
そもそも、これらは本質的な「DX」ではありません。

DXと勘違いされる2つの言葉

こういったITツールを導入することを「デジタイゼーション」
そして「営業DX」のように個別の業務をデジタル化することを「デジタライゼーション」と呼びます。

詳しくは以前のコラムでも触れていますので、お手すき時にご覧くださいませ(デジタイゼーションとデジタライゼーションについて)。

ここで一点補足しますが、この「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」で止まってしまうことが間違いと言っているわけではありません。

ITツールが…今だと分かりやすく言えば「生成AI関連」のツールを導入した。

ということで終わっても、その会社にとってHAPPYであれば、それはそれでOKなのです。ただ当コラムで指摘したいことは次の一点。

「但し、それはDXとは呼びませんよ」というだけです。

DXは全ての企業が取り組むべきなのか

ITベンダーが「煽る」1つの要因に、経済産業省が2018年に出した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』があると思います。

2025年問題と言えば、団塊世代の方が後期高齢者に突入し、人口減少も進んでいることから女性や、高齢者の労働参加をさらに加速させても、そもそも労働力人口が足りなくなりますよ。

といったものですよね。

この労働力人口とIT技術がどうリンクするのかと言えば、要するにこれまでの古いシステム(これを専門用語でレガシーシステムと呼びます)を改修できるエンジニアがいなくなってしまいますよ。
もし不具合が起きた時には直せるエンジニアがいないから、それに頼ったビジネスをしていた場合、経済損失が大きいですよ。
「だからDXごと急ぎましょう」というのが文脈になるわけです。

つまり何が言いたいかと言えば次の2点なのです。

  • レガシーシステムに頼った会社は急いでシステムの入れ替えをしましょう
  • DXをしなくても良い会社もある

では「DXをしなくても良い会社」を考えてみましょう。

DXをしなくても良い会社

そもそもDXツールを開発、販売しているITベンダーも「新たに」DXが出来ている会社がどれほどあるのか…と言った印象はありますが、例えば「町中華」を考えてみましょう。

ここがDXを行う必要があるでしょうか?

私は答えは否だと思います。町中華がさらに発展するためには、より美味しい料理を作ることでしょう。もちろん店主様の高齢化なども考慮し、オーダー等の一部オペレーションにITツールを導入する「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」はあっても良いかもしれませんが、資金を投入する優先順位は、食材であり、店舗であり、その次以降がITツールになるでしょう。

町中華がCMSを使ってWEBサイトを作っても、恐らく本業にはほぼ影響しないでしょう。

ただ、中華を提供するビジネスから、美味しいラーメンの作り方や、餃子の作り方を動画配信し、それをマネタイズしていくというのであれば「DX」と呼べると思いますが、そうなる必要があるかないかと言えば、私は必要ないと思います。

だってこのコラムを読んで頂いている、同業のITベンダー様も町中華が全て閉店し、全て料理系の動画配信業に転身されたら困りますよね?
コロナでテイクアウトという新しいサービスを展開するなど、外食産業も変化がありましたが、シンプルに外食産業には私たちのニーズがありますから。

まとめ

まとめますが、「DX」とはITツールを導入することや、営業DXのように一部門、一業務をデジタル化することではなく、会社そのもを変化させ、市場で生き抜いていくことです。

よくDX事例として名前があがるのが、元はオンラインのDVDレンタル会社だったNetflixです。
ご存知のように、今ではオリジナルの番組も手掛ける動画配信会社ですよね。まさに、市場で生き抜く、勝つために会社そのものが大きく「トランスフォーメーション」したわけです。

ただし、全ての会社が「DX」を行う必要だってないわけです。またシンプルに昔のように全員が、毎日オフィスに集まらない会社も増えたわけですから、必要最小限のITツールを導入することも間違いではありません。

ただそれらはDXとは呼ばずに、デジタイゼーションやデジラタイゼーションと呼びますよ。ということなのです。
以前、ウェビナーで同様の内容で『今さら聞けない「DX基本のき」』というオンラインセミナーを開催していますが、アーカイブで配信していますので、ご関心のある方は下記よりお申し込みくださいませ。

著者・編集者情報

藤江信之 (マーケティング室)

京都出身。

大学卒業後、税理士向け商社で営業マンを経験したのち、2000年代前半より広告代理店や、WEB制作会社等で主にクリエイターとして従事。
大手エネルギー会社や、大手小売店、某市地下鉄などのWEBサイトやプロジェクトに関わる傍ら、2010年頃まで、都内のWEBデザインスクールで非常勤の講師を務める。

その後クライアントワークから、自社の広報マーケティングにキャリアチェンジ。
上場IT企業のマーケティング部門立ち上げに中心メンバーとして関わり、ウェビナーや展示会の運営などを通じリード創出を行う。

人材サービス会社を経て、2023年6月ネクストソリューションズに入社。
“提案サイド”と“担当者サイド”両方を経験した知見を活かし、マーケティング室の立ち上げ中。

趣味は市民ランナー&高校野球観戦&古城跡散策のマニア。

DX推進のための役立ち資料

セミナーのご案内

CONTACT / OFFICE

CONTACT

TOKYO OFFICE

03-5422-3850

ACCESS

OSAKA OFFICE

06-7777-9633

ACCESS